たとえば

2017/11/14

鳥取駅から松崎駅に汽車はちゃんと到着したのに、窓の外に見えた松崎駅前があまりにも閑散としていたので、こんなところにゲストハウスはないはずだ ともう1つ先の隣駅で降りてしまった
間違いに気づいて反対方向の汽車に乗り直して、松崎駅にやっと着いた
降り立ったその町の空気があまりにも静かだったので、ぼんやりと歩いていたら松崎駅から徒歩五分のはずのたみを通り過ぎ、その先の松崎神社まで歩いてしまった
行き過ぎた道を戻ってようやくたみを見つけると、今度は玄関の扉が閉まっていたので途方にくれた
しばらくするとスタッフがやって来て、ごめんごめんああ今日からだったかあ鍵閉めちゃった忘れてた と、なにやら言いながら玄関にいれてくれた
アーモンドチョコレートを一粒くれたので食べたけど、なんだか緊張して味がしなかった
おすすめだと言う寿湯が定休日で あちゃー、今日は残念ですね と言われる
もうあんまり歩きたくなかったので、近くの東湖園というお風呂に入りに行くとお婆ちゃんしかいなくて、よぼよぼの裸に囲まれながら、邪魔にならないように静かに湯に浸かった
たみに戻ってカフェでカレーを食べていたらカウンターの上からスタッフがひょっこり顔を出して、辛いかな?どうかな?と、そわそわしていた
しばらくして、どうしてここに来たの?みたいな鋭い質問をされたので、答えを笑ってぼんやりさせながら、まだあんまり喋りたくないなあと 思った

次の日 朝早く起きたら白くて大きな犬がいて、かわいいなあ と触ろうとすると、激しく動いたので ちょっとひいた

その朝 キッチンでトーストを食べて、それから夜を何度も繰り返して、気づいたら三年経っていた
あの時、ひょっこり顔を出されて辛い?どう?と確認されたカレーを、カウンターの中で作ることになった
この明かりはほっとするなあ とすこしだけ泣いたことのある入口の看板の明かりを、日々灯すことになった
あんなに喋りたくなかったのに毎日ぺらぺらとたくさんのことばの掛け合いをする

時々カウンターの中でみんなのようすを眺めながら ふと、始まりの日のことを思い出す

そうして 誰かの始まりの日を、できるだけだいじに見届ける

(い)

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