旅人のはなし1

2019/01/22

彼は家を持っていない。毎日違うゲストハウスに帰る。
仕事は会社員。毎日同じところへ通う。
持ち物はバックパックひとつ。
週末は少し遠くへでかける。ヒッチハイクをしたりもする。

たみにもバックパックひとつで、いろんなゲストハウスを周った帰りに来てくれた。
たみにくる一つ前のゲストハウスで、こどもがショップカードで遊んでいたとき、
ひとつ彼の前に落ちてきたのがたみのカードだったそう。
裏面の情報は見ないまま、「たみ」という名前だけでここにたどり着いてくれた。

旅先でいろんなひとと出会って、関わって、知るたびに彼は変わっていく。
たみに来た最初のときからたみを出発していくときまで、彼は変わり続けていた。
たみの近所のおじいちゃんちにお呼ばれしたり、汽水空港で本を選んでもらったり。
目の前にきたものに飛び込んで、近づいて、知っていく。そのスピード感がすごい。

明日、これまでやったことないヒッチハイクを彼に手伝ってもらって、やってみよう。
わたしもちょっと飛び込んでみよう。
わたしの知らないわたしに手を伸ばそう。

(あらり)

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