新生うかぶ劇場

2022/07/15

たみの改修工事がようやく終わった。予定していた当初の時間より2倍かかった。常連さんは待ちくたびれているようだったし、スタッフもいつ終わるんかなーとぼやいた日もあったと思う。

だが、それにしても新しいたみは、とてもよい空間になっていた。

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それを感じたのは6月の終わりの土曜日。うかぶLLCに長く貢献してきたマネージャーの新井が、卒業イベントをした日のことだ。スタッフが一晩店長になって好きなものをふるまう『へなちょこ酒場』。あらりーは蛇谷と一緒に新しいキッチンに立って韓国料理をふるまい、得意の弾き語りで最近ハマっているK-popをみんなに聴かせてくれた。

私は用事があって少し遅れて行ったのだが、既に外まで人が溢れかえり、あらりーやたみを慕う人々でにぎわっていた。

そこで目に入った風景。

あらりーが歌うまわりを様々な目線の高さでゆったり囲む人々。その中で近所のこどもがコンテンポラリー・ダンサーみたいに自由に踊っている。それを外からガラス窓越しに眺める人々。駅の方から歩いてくると、灯りに照らされた人々の前半身が暗闇にぼんやり浮かんでいる。

ライブが終わってからも、いくつも小さなグループが空間のあちこちの段差に腰かけたり、開放的で長くなったカウンターの前に立って飲んだり食べたり。ガラス戸と階段と回遊空間で遊ぶこどもたちや、カフェのテーブルで丸くなって話し込む人たちもいた。

まるでステージのない小劇団の舞台のようだった。

大きなひとつながりの空間なのに、小さなグループが互いを干渉しない感じ。一人で黙っていても疎外されずに居所がある感じ。チェルフィッチュとかピナ・バウシュの舞台みたいな。焦点が定まらなくて、同時多発的で、それが一つの空間に成立しているのが面白い。どこを切り取っても、それぞれが絵になってみえる。

夜風が吹き抜ける空間で、私はそれらを眺めた。
どんな劇場の客席よりも心地よかった。

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さて。
おしゃれで社会派な雰囲気漂う横文字劇団の例を出してみたけれど、ご存知我らが団長・蛇谷りえが、こってこてBorn in OSAKAガールだからなのか、たみの中で起こっていることは、どちらかといえば新喜劇である。

ずっこけ上等で、まいにち座長も新旧スタッフもがんばっている。タイミングが命だけど、なかなかどうしてずれたりすることも日常茶飯事のたみ。

なにはともあれ、みなさんには新生うかぶ劇場を楽しみにしていただければ幸いである。個人的にはうかぶのスチ子を目指そうかなーと思っている。

(さち)

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